低用量ピルの副作用(吐き気・不正出血・血栓症・太るって本当?)
低用量ピルを飲み始めると、吐き気や不正出血、頭痛、乳房の張りが出ることがあります。多くは数か月で落ち着くとされますが、血栓症のサインだけは見逃さないことが大切です。体重への影響や飲めない人の条件、副作用が出たときの相談先も紹介します。
学会・公的機関の資料と論文をもとに書いています。編集方針

この記事でわかること
- 吐き気・不正出血・頭痛・乳房の張りなど、飲み始めに多い副作用と続く期間の目安
- 血栓症の頻度と、すぐに受診が必要な5つのサイン
- 「ピルで太る」についての研究結果と、飲めない人の条件
目次
低用量ピルの副作用で多いのは、不正出血、頭痛、吐き気、乳房の張りや痛みです。こうした症状は飲み始めの数か月に起こりやすく、英国の公的な案内では、出血は落ち着くまで3か月ほどかかることがあり、3か月を過ぎても困る症状が続くなら医師や薬剤師に相談するよう案内されています[7][8]。まれですが重い副作用に血栓症があり、脚の痛みや腫れ、胸の痛み、激しい頭痛、見えにくさが出たら服用をやめてすぐ受診が必要です[1][2]。「ピルで太る」については、大きな体重増加は確認されていないとする研究のまとめがあります[5]。
低用量ピルの副作用はどのくらい起こる?
低用量ピルは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)を少量ずつ含む飲み薬です。避妊が目的の「OC」と、月経困難症の治療薬として保険で処方される「LEP」があり、日本産科婦人科学会と日本女性医学学会が使い方のガイドラインを出しています[11]。違いや費用については「低用量ピルのオンライン診療の選び方」で詳しく紹介しています。
副作用の頻度は、薬の添付文書で確かめることができます。月経困難症の治療に使われるレボノルゲストレル・エチニルエストラジオール配合錠の添付文書では、臨床試験で次のような頻度が報告されています[1]。
| 症状 | 報告された頻度 |
|---|---|
| 不正出血(予定外の出血) | 72.9% |
| 下腹部痛 | 20.3% |
| 頭痛 | 11.2% |
| 吐き気(悪心) | 10.4% |
| 乳房の痛み、むくみ、体重増加、めまい、気分の落ち込みなど | 0.1〜5% |
不正出血の数字が大きく見えますが、少量の出血や茶色いおりもの程度も含まれます。この試験には、休薬期間を長くあける飲み方(77日連続服用)も含まれており、その飲み方では出血の副作用が多かったとされています[1]。MSDマニュアル(医療者向け)でも、お腹の張り、乳房の圧痛、吐き気、頭痛が最も多い副作用として挙げられています[6]。
飲み始めに多い副作用と、落ち着くまでの目安
不正出血
飲み始めの数か月によく起こります。英国の家族計画協会の冊子では、落ち着くまで3か月ほどかかることがあると説明されています[8]。飲み忘れや、飲む時間が大きくずれたことがきっかけになることもあります。飲み忘れたときの対応は「ピルを飲み忘れたときの対処法」で紹介しています。
吐き気
エストロゲンの影響と考えられており、飲み始めに出やすい症状です[6]。夕食後や寝る前など、飲む時間を変えると楽になる人もいます。時間を変える場合は、毎日同じ時間にそろえます。
服用して3時間以内に吐いてしまった場合、薬が吸収されていないおそれがあります。英国NHSでは、その場合はすぐにもう1錠飲み、次からはいつもの時間に戻すよう案内しています。24時間以上続く下痢のときも、飲み続けたうえで、下痢がおさまってから7日間はコンドームなどを併用するよう案内されています[9]。手元の薬で予備の錠剤をどう扱うかは、処方した医師に確認してください。
頭痛・乳房の張り・気分の変化
頭痛、乳房の張り、気分の変化も、飲み始めにみられることがあります。英国の冊子では、数か月たっても続く場合はピルの種類を変えると楽になることがある、とされています[8]。
ただし、いつもと違う激しい頭痛や、目の前がチカチカする・見えにくいといった症状をともなう頭痛は、血栓症や前兆のある片頭痛のサインのことがあります。様子を見ずに受診してください[1][2]。

血栓症のリスクは?数字で見るとどのくらい
低用量ピルの重大な副作用が血栓症です。脚・肺・心臓・脳・目の網膜などの血管に血の塊ができる病気で、命に関わることがあります[1]。
欧州医薬品庁(EMA)は、1万人の女性が1年間に静脈血栓症を起こす人数を次のように示しています[3]。
| 状況 | 1万人あたり/年 |
|---|---|
| ホルモン剤を使っていない(妊娠していない)女性 | 約2人 |
| レボノルゲストレルなどを含むピル | 約5〜7人 |
| デソゲストレル・ドロスピレノンなどを含むピル | 約9〜12人 |
日本の全国調査では、OC・LEPの使用者1万人あたりの血栓症は年間約1.5人と推計され、欧米の報告よりも低い値でした[4]。妊娠中のリスクはピルよりもはるかに高い、とも説明されています[6]。
起こる時期にも特徴があります。EMAは使い始めの1年目にリスクが高いとしています[3]。国内の調査では、発症の約35%が服用開始から1か月以内、約54%が3か月以内でしたが、2年以上たってから起きた例も約16%ありました[4]。飲み慣れてからも油断はできません。
同じ調査では、40歳以上、肥満(BMI25以上)、3時間以上座りっぱなしの状態が血栓症と関係していたと報告されています[4]。長時間のフライトや車の移動では、ときどき脚を動かし、水分をとるよう意識しましょう。
すぐに受診が必要な5つのサイン(ACHES)
血栓症などの重い副作用のサインは、英語の頭文字をとって「ACHES(エイクス)」と呼ばれ、医療者の教育でも使われています[10]。
- A(Abdomen)腹部:激しい腹痛
- C(Chest)胸:胸の痛み、突然の息切れ
- H(Headache)頭:激しい頭痛、手足の脱力・まひ、ろれつが回らない
- E(Eyes)目:急に見えにくくなる、視野が欠ける
- S(Severe leg pain)脚:ふくらはぎや太ももの急な痛み、腫れ、しびれ
国内の添付文書や安全性速報でも、脚の急な痛み・腫れ、突然の息切れ、胸痛、激しい頭痛、手足の脱力・まひ、話しにくさ、急な視力障害が「血栓症が疑われる症状」として挙げられています[1][2]。また、吐き気・嘔吐、頭痛、脚の腫れ・痛み・しびれ、赤み、熱っぽさといった初期の症状が出たときも、服用を中止して医師に相談するよう注意が出されています[2]。
これらの症状があるときは、服用をやめて救急外来を受診してください。受診先では「低用量ピルを飲んでいる」と必ず伝えます[2]。
ピルで太るというのは本当?
「ピルを飲むと太る」と心配する声はよく聞かれます。コクラン・レビュー(2014年)は49件の臨床試験をまとめ、偽薬などと比べた4件の試験では、ピルやパッチが体重を変えるという根拠は見つからなかったと報告しています。研究の数は十分とはいえないものの、「大きな影響はみられなかった」と結論づけています[5]。英国NHSも、ピルで体重が増えるという根拠はないとしています[7]。
一方で、エストロゲンによって最大2kgほど体重が増えることがある、むくみ(水分の貯留)で体重が変わることがある、とする記載もあります[6][8]。添付文書でも、体重増加は0.1〜5%の頻度で報告されています[1]。体重が大きく増えて気になる場合は、ピルの種類を変えられることもあるので、自己判断でやめずに医師に相談してください[6]。

低用量ピルを飲めない人(禁忌)
添付文書では、次のような人は服用できないとされています(主なもの)[1]。
- 35歳以上で、1日15本以上たばこを吸う人
- 前兆(目の前がチカチカするなど)をともなう片頭痛がある人
- 血栓症、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈の病気がある人、または過去にあった人
- 血栓ができやすい体質の人、抗リン脂質抗体症候群の人
- 高血圧(軽いものを除く)、脂質異常症、血管の合併症をともなう糖尿病の人
- 乳がん・子宮体がんなどがある、または疑われる人、原因のわからない性器出血がある人
- 重い肝臓の病気がある人
- 手術の前4週間・後2週間、出産後4週間以内、長く寝たきりの状態の人
- 妊娠中・授乳中の人
ここに挙げたのは一部です。持病、服用中の薬やサプリメント、家族に血栓症になった人がいるかどうかは、診察で必ず伝えてください。
副作用が出たときにできること
- 軽い症状(吐き気、少量の出血、乳房の張りなど):自己判断で飲むのをやめると、避妊の効果が下がったり、出血が増えたりすることがあります。まずは続けながら、処方した医師に相談します。
- 3か月たっても続く、生活に困る:ピルの種類や飲み方を変える選択肢があります[7][8]。
- 出血が多い・長引く:ほかの病気が隠れていないか確認が必要です。添付文書でも、長く続く出血は悪性の病気を除外する検査をするよう書かれています[1]。
- ACHESのサインがある:服用をやめて、すぐに救急外来へ。
相談先は、処方を受けた医療機関、または婦人科(産婦人科)です。オンライン診療で処方を受けている場合も、サービスの相談窓口や再診で相談できます。ただし、内診や血液検査が必要なときは対面受診になります。
婦人科ではどんなことをする?
副作用の相談では、症状の内容や始まった時期、飲み方(飲み忘れがないか)を聞かれます。必要に応じて、血圧測定、内診や超音波検査、妊娠検査、血液検査などが行われます。
対応としては、しばらく経過を見る、エストロゲンの量やプロゲスチンの種類が違う薬に変える、飲み方を変える、といった方法がとられます[6][8]。血栓症が疑われる場合は、血液検査や画像検査で調べ、必要な治療が行われます。
よくある質問
Q1. 副作用はどのくらいで落ち着きますか?
個人差がありますが、不正出血などは飲み始めの数か月に多く、英国の案内では3か月ほどかかることがあるとされています[7][8]。3か月を過ぎても続いて困る場合は、ピルの種類を変えられることもあるので、医師に相談してください。
Q2. 吐き気がつらいときは、飲むのをやめてもいいですか?
自己判断でやめると避妊の効果が下がったり、出血が起こりやすくなったりします。まずは飲む時間を夕食後や寝る前に変えるなどを試し、処方した医師に相談してください。飲んで3時間以内に吐いた場合は、追加で飲む必要があることがあります[9]。
Q3. 血栓症は飲み始めだけ注意すればいいですか?
使い始めの1年目はリスクが高いとされていますが[3]、国内の調査では2年以上たってから起きた例も約16%ありました[4]。飲んでいる間はずっと、脚の痛みや腫れ、胸の痛み、激しい頭痛などのサインに気をつけてください。
Q4. ピルを飲むと太りますか?
研究をまとめたコクラン・レビューでは、ピルによる大きな体重変化は確認されていません[5]。ただし、むくみなどで体重が変わることはあり、まれに体重増加が副作用として報告されています[1][8]。気になる場合は医師に相談してください。
Q5. たばこを吸っていても飲めますか?
35歳以上で1日15本以上吸う人は服用できません[1]。それ以外でも喫煙は血栓症のリスクを高めるとされるため、診察では本数も含めて正直に伝えてください。
参考文献
参考にした論文・資料(11件)
- PMDA 添付文書:月経困難症治療剤 レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール配合製剤(2023年11月改訂 第5版). https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/04987846112097
- バイエル薬品. 月経困難症治療剤ヤーズ配合錠による血栓症について(安全性速報 13-02号, 2014年1月). https://www.pmda.go.jp/files/000144088.pdf
- European Medicines Agency. Combined hormonal contraceptives(2013年の評価). https://www.ema.europa.eu/en/human-regulatory-overview/post-authorisation/pharmacovigilance-post-authorisation/referral-procedures-human-medicines/combined-hormonal-contraceptives
- 杉浦和子. わが国における女性ホルモン剤と血栓症の実態―全国疫学調査結果より―. 日本血栓止血学会誌. 2021;32(5):632-634. https://www.jsth.org/pdf/oyakudachi/202208_13.pdf
- Gallo MF, et al. Combination contraceptives: effects on weight. Cochrane Database Syst Rev. 2014;(1):CD003987(やさしい要約). https://www.cochrane.org/evidence/CD003987_effect-birth-control-pills-and-patches-weight
- MSDマニュアル プロフェッショナル版. 経口避妊薬(2023年8月更新). https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/家族計画/経口避妊薬
- NHS. Combined pill: side effects and risks. https://www.nhs.uk/contraception/methods-of-contraception/combined-pill/side-effects/
- FPA. Your guide to the combined pill(2019年, Royal Wolverhampton NHS Trust 掲載版). https://royalwolverhampton.nhs.uk/wp-content/uploads/2025/05/Your_guide_to_the_combined_pill.pdf
- NHS. Combined pill: what to do if you're sick or have diarrhoea. https://www.nhs.uk/contraception/methods-of-contraception/combined-pill/sickness-or-diarrhoea/
- Lecturio. ACHES: birth control adverse effects. https://www.lecturio.com/nursing/free-cheat-sheet/aches-birth-control-adverse-effects
- 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会. OC・LEPガイドライン 2020年度版(Minds書誌情報). https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00641/
※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。服用中に気になる症状がある場合は、処方した医師や婦人科にご相談ください。
この記事について
- 書いた人
- フェムコア研究所 編集部
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- 参考文献に挙げた11件の資料を開いて、数字や表現が原文と合っているかを確認しています。「必ず治る」「誰にでも効く」とは書きません。
- 更新履歴
- 2026.10.31 公開
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