不感症(イケない・感じない)の原因と、自分でできること、相談先
セックスでイケない、感じない、中イキできない。こうした悩みは珍しくなく、挿入だけでオーガズムに達する女性は2割弱と報告されています。不感症と呼ばれる状態の医学的な考え方、よくある原因、自分で試せること、婦人科やカウンセラーなどの相談先。
学会・公的機関の資料と論文をもとに書いています。編集方針

この記事でわかること
- 「不感症」は日常の言葉で、医学では女性オルガズム症や性的関心・興奮障害と呼ばれること
- 挿入だけでオーガズムに達する女性は2割弱と報告されており、イケないのは珍しくないこと
- 痛み・薬・更年期など体の原因もあるので、つらいときは婦人科やカウンセラーに相談できること
セックスでイケない、気持ちよさをあまり感じない。こうした状態は「不感症」と呼ばれることがありますが、医学的な診断名ではなく、医療では「女性オルガズム症」「女性の性的関心・興奮障害」といった名前で扱われます。英国の全国調査では、過去1年に オーガズムに達しにくい と答えた女性は 約16%[5]、米国の調査では、挿入だけでオーガズムに達する と答えた女性は 18.4% にとどまると報告されています[8]。原因の多くは、刺激の不足やストレス、パートナーとの関係、痛みや乾燥、薬の影響など、体と気持ちの両方にあります。つらさが続くときは、婦人科や性の悩みを扱うカウンセラーに相談できます。
「不感症」とは、どんな状態?
辞書では、不感症は「性交の際、女性が快感を感じない状態」と説明されています[1]。ただ、日常の会話では「イッたことがない」「前はイケたのに最近イケない」「そもそもしたい気持ちにならない」「濡れにくい」など、いくつかの違う悩みがまとめて「不感症」と呼ばれがちです。
医療の場では、米国精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)にもとづいて、主に次のように分けて考えます[2]。
- 女性オルガズム症:興奮は感じるのに、オーガズムに達しない、達するまでにとても時間がかかる、まれにしか達しない、感覚がとても弱い
- 女性の性的関心・興奮障害:性的な関心がわかない、触れられても興奮しにくい、体の反応(潤いなど)が起こりにくい
どちらも、症状が6か月以上続いていること、そして 本人が苦痛を感じている、またはパートナーとの関係で困っていること が診断の条件とされています[2][3]。医師は、年齢や性的な経験、受けている刺激が十分かどうかも考えたうえで判断します[3]。
つまり、イケないことがあっても、本人が困っていなければ病気として扱う必要はありません。一方で、「自分だけおかしいのでは」と悩んでいるなら、それは相談してよい理由になります。
イケない女性はどのくらいいる?
英国の全国調査(Natsal-3、16〜74歳の15,000人以上)では、過去1年に何らかの性の悩みがあった女性は 51%、そのうち オーガズムに達しにくい は 16%、腟の乾燥 は 13% と報告されています[5]。
米国の約3万2,000人の女性を対象にした調査では、何らかの性の悩みがある人は 43.1% でしたが、それによって苦痛を感じている人は 12.0% でした[6]。オーガズムの悩みに限ると 21% と報告されています[7]。悩みがあっても苦痛にまで至らない人も多く、どのくらい困っているかは人によって大きく違います。
MSDマニュアル家庭版でも、腟への挿入だけで毎回オーガズムに達する女性は半数に満たないこと、約10人に1人はオーガズムを経験したことがないこと、その中にも性生活に満足している人がいることが紹介されています[4]。

「中イキできない」のは普通のこと?
「中イキ(挿入でイクこと)できない」と悩む人は少なくありませんが、研究を見ると、むしろ多数派です。
米国の18〜94歳の女性1,055人を対象にした調査では、挿入だけでオーガズムに達するのに十分 と答えた人は 18.4% でした。性交でオーガズムに達するにはクリトリス(陰核)への刺激が必要 と答えた人が 36.6%、必要ではないが、あるとより気持ちよくなる と答えた人が 36% と報告されています[8]。MSDマニュアルでも、多くの女性はクリトリスへの刺激でオーガズムに達するとされています[4]。
また、米国の成人5万人以上を対象にした別の研究では、パートナーとの性行為で「たいてい、またはいつもオーガズムに達する」と答えた割合は、異性愛の男性95%に対し、異性愛の女性は 65% でした。オーガズムに達しやすかった女性には、挿入に加えて手や口での刺激があった、性行為の時間が長かった、してほしいことを伝えていた、といった特徴があったと報告されています[9]。
挿入だけでイケないのは、体の異常ではなく、刺激の種類や時間が合っていないことが多いと考えられます。
イケない・感じない原因
原因は一つとは限らず、いくつかが重なっていることがよくあります。
刺激や時間が足りない
前戯が短い、パートナーが早く射精してしまう、どこが気持ちいいかを伝え合えていない、といった状況が、オーガズムに達しにくい理由として挙げられています[3][4]。女性の体や性的な反応についての知識が、本人やパートナーに十分でないことも関係するとされています[4]。
ストレス・不安・疲れ
不安やストレス、パートナーへの信頼が持てないことは、オーガズムを妨げる心理的な要因とされています[3]。気分の落ち込みや不安は、性的な関心や興奮の低下とも密接に関係していると説明されています[2]。疲れも、興奮を妨げる要因の一つです[2]。「イカなきゃ」「相手をがっかりさせたくない」と意識しすぎることが、かえって感覚から気持ちをそらしてしまうこともあります。
パートナーとの関係
関係への不満や相手に対する否定的な気持ちがあると、関心や興奮がわきにくくなることがあります[2]。先ほどの米国の研究でも、関係への満足度が高い女性ほどオーガズムに達しやすかったと報告されています[9]。
痛みや乾燥
性交のときに痛みがあると、気持ちよさを感じる余裕がなくなります。痛みの原因や対処は 性交痛の記事 に、乾燥については 膣の乾燥の記事 に詳しく書いています。
薬の影響
SSRI(抗うつ薬の一種) は、オーガズムを妨げることがある薬として知られています[3][4]。一部の抗精神病薬も原因になることがあります[3]。薬を飲み始めてから感じにくくなったと思ったら、自己判断でやめずに、処方した医師に相談してください。薬の変更や追加で対応できる場合があるとされています[4]。
更年期・産後などのホルモンの変化
閉経前後にエストロゲンが減ると、腟や外陰部が乾燥しやすくなります。これは閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)と呼ばれ、閉経期の女性の約半数にみられるとされています[2]。産後や、アロマターゼ阻害薬という薬で治療を受けている間など、エストロゲンが低い状態のときにも、同じような症状が出ることがあります[2]。
体の病気
糖尿病や多発性硬化症、脊髄の損傷などによる神経の障害、硬化性苔癬などの外陰部の皮膚の病気が関わることもあります[3][4]。
骨盤底筋の働き
骨盤底筋は、腟や尿道、肛門を取り囲む筋肉です。この筋肉の働きと性機能との関係も研究されていますが、骨盤底筋だけで感じ方が決まるわけではありません。研究でわかっていることは、後半の「自分でできること」で紹介します。
自分でできること
以下は医療情報や研究で紹介されている方法です。合うかどうかには個人差があり、どれか一つで変わるというものではありません。
1. 自分の体を知る
MSDマニュアルでは、どんな触れ方が気持ちいいかを知るために、一人で自分の体に触れてみること(セルフプレジャー) が勧められています[4]。専門家のもとで行う治療でも、段階を追ってセルフプレジャーを練習する方法が第一の選択肢とされています[3]。
誰にも気をつかわずに、時間をかけて、どこにどんな刺激が心地よいかを確かめてみてください。イクことを目標にせず、感覚に注意を向けるだけでも十分です。リラックスの方法を取り入れたり、バイブレーターを使ったりすることも選択肢として挙げられています[4]。
2. パートナーに伝える
してほしいことを伝えていた女性ほどオーガズムに達しやすかった、という報告があります[9]。
- 性行為の最中ではなく、落ち着いたときに話す
- 「あなたが下手」ではなく「こうされると気持ちいい」と伝える
- 挿入の前に、手や口での触れ合いに時間をかけてもらう
- 挿入中にクリトリスへの刺激を加えることを、二人で試してみる
パートナーと一緒に、挿入をせずに触れ合うことから段階的に進める「センセート・フォーカス」という方法も紹介されています[4]。
3. 潤滑剤を使う
潤いが足りないと摩擦で痛みが出て、気持ちよさを感じにくくなります。水性またはシリコン製の潤滑剤を使う、時間をかけることで負担が軽くなることがあります。選び方は 性交痛の記事 を参考にしてください。
4. 痛みがあるなら、まず痛みの相談を
痛みがあるまま「感じるように」がんばる必要はありません。入口が痛い、奥が痛いなど、痛みの原因によって対処が変わるため、先に婦人科で相談してください。
5. 骨盤底筋トレーニング
骨盤底筋トレーニングと女性の性機能を調べたシステマティックレビュー(米国産婦人科学雑誌、2024年)では、21件のランダム化比較試験が集められ、そのうち4件をまとめた解析で、性的興奮・オーガズム・満足度・痛みのスコアが対照群より良好だった と報告されています[10]。
ただし、レビュー自体が、試験ごとの方法や結果のばらつきが大きく、エビデンスの確実性は「非常に低い」 と評価しています[10]。現時点では「変化が報告されている段階」で、誰にでも同じ結果が出るとは言えません。また、性交痛がある場合は、骨盤底筋が緊張しすぎていて、締める練習より「ゆるめる」練習が必要なこともあります。やり方や注意点は 膣トレの記事 に書いています。
6. 「イクこと」を目標にしすぎない
オーガズムがなくても性生活に満足している人はいます[4]。触れ合いそのものを楽しむ、心地よさを大切にする、と考え方を変えるだけで、プレッシャーが軽くなることもあります。マインドフルネスなど、感覚に注意を向け続ける練習も、治療の一つとして挙げられています[3]。

どこに相談すればいい?
性の悩みは人に話しにくいものですが、相談できる場所はあります。
- 婦人科(産婦人科):痛み、乾燥、更年期の変化、おりものや出血など、体の原因がないかを確認できます。
- 女性外来:女性特有の不調を幅広く相談できる外来です。医療機関によっては女性の医師が担当します。
- 性機能を診る医療機関・性の悩みのカウンセリング:日本性科学会は、学会が認定したセックス・セラピスト、セックス・カウンセラーの一覧を公開しています。産婦人科医、泌尿器科医、精神科医、心療内科医、臨床心理士・公認心理師、助産師などが含まれ、地域ごとに探せます[12]。同学会のカウンセリング室では、オーガズムの悩みや性欲の低下、性交痛などの相談を、本人だけでなくカップルでも受け付けています[11]。
- 処方した医師:抗うつ薬などを飲み始めてから感じにくくなった場合は、その薬を処方した医師に。
早めに受診したほうがよい場合
- 性交のときに 痛み がある、出血がある
- 腟の 乾燥 やヒリヒリ感が続いている、閉経前後から変化を感じる[2]
- 薬を飲み始めてから 感じにくくなった[3][4]
- 以前は感じていたのに、はっきりした理由がなく急に感じなくなった
- 糖尿病などの持病がある、ほかの体の変化も気になる
相談を考えてよいとき
- イケない・感じないことが 半年以上 続いていて、つらいと感じている[3]
- そのことでパートナーとの関係に悩んでいる
- 性行為そのものが怖い、避けるようになっている
- 気分の落ち込みや不安が続いている
受診のときに伝えるとよいこと
いつからか、前は感じていたか、一人のときと二人のときで違うか、痛みや乾燥があるか、飲んでいる薬、月経や閉経の状況などを伝えると、原因を考える手がかりになります。話しにくいときは、メモに書いて渡しても大丈夫です。
よくある質問
Q1. 一度もイッたことがないのは、おかしいですか?
おかしいことではありません。MSDマニュアルでは、約10人に1人の女性はオーガズムを経験したことがないとされ、その中にも性生活に満足している人がいると紹介されています[4]。困っていなければ治療の必要はありませんが、イケるようになりたい、つらいと感じるなら、婦人科やカウンセラーに相談できます。
Q2. 中イキできないのは、体のどこかに問題があるからですか?
多くの場合、そうではありません。米国の調査では、挿入だけでオーガズムに達するのに十分と答えた女性は18.4%で、多くの人がクリトリスへの刺激を必要とする、またはあるとより気持ちよくなると答えています[8]。
Q3. 一人だとイケるのに、パートナーとだとイケません。
よくある悩みです。刺激の種類や時間、緊張、伝え合えていないことなどが関係していると考えられます[3][4]。一人のときに心地よかった触れ方を、パートナーに伝えてみるのも一つの方法です。
Q4. 抗うつ薬を飲んでから感じにくくなりました。薬をやめてもいいですか?
自己判断でやめるのは避けてください。SSRIなどの抗うつ薬はオーガズムを妨げることがあると知られており、医師が薬を変えたり追加したりして対応する場合があります[4]。まずは処方した医師に相談してください。
Q5. 不感症の薬はありますか?
MSDマニュアルでは、女性のオーガズムの悩みに対して、有効性が示された薬は現時点ではないとされています[3][4]。治療の中心は、セルフプレジャーの練習、カウンセリングやセックスセラピー、痛みや乾燥など体の原因への対処です[3]。
※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、診断や治療に代わるものではありません。症状がある場合は医療機関にご相談ください。
参考文献
参考にした論文・資料(12件)
- コトバンク「不感症」(デジタル大辞泉ほか) https://kotobank.jp/word/不感症
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「女性の性機能および性機能障害の概要」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/女性の性機能および性機能障害/女性の性機能および性機能障害の概要
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「女性オルガズム症」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/女性の性機能および性機能障害/女性オルガズム症
- MSDマニュアル家庭版「女性のオルガズム障害」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/22-女性の健康上の問題/女性の性機能および性機能障害/女性のオルガズム障害
- Mitchell KR, et al. Sexual function in Britain: findings from the third National Survey of Sexual Attitudes and Lifestyles (Natsal-3). Lancet. 2013.(LSHTM解説) https://www.lshtm.ac.uk/newsevents/news/2013/natsal_sex_problems.html
- Shifren JL, Monz BU, Russo PA, Segreti A, Johannes CB. Sexual problems and distress in United States women: prevalence and correlates. Obstet Gynecol. 2008;112(5):970-978. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18978095/
- Harvard Gazette. Survey finds disconnect between sexual problems in women and feeling of distress(Shifren 2008の解説). 2008. https://content.news.harvard.edu/gazette/story/2008/11/survey-finds-disconnect-between-sexual-problems-in-women-and-feeling-of-distress/
- Herbenick D, et al. Women's Experiences With Genital Touching, Sexual Pleasure, and Orgasm: Results From a U.S. Probability Sample of Women Ages 18 to 94. J Sex Marital Ther. 2017.(PsyPost解説) https://www.psypost.org/women-highly-diverse-comes-orgasm-kinds-touch-find-pleasurable/
- Frederick DA, St. John HK, Garcia JR, Lloyd EA. Differences in Orgasm Frequency Between Gay, Lesbian, Bisexual, and Heterosexual Men and Women in a U.S. National Sample. Arch Sex Behav. 2017. https://core.ac.uk/download/215756537.pdf
- Pelvic floor muscle training as treatment for female sexual dysfunction: a systematic review and meta-analysis. Am J Obstet Gynecol. 2024;231(1):51-66.e1. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38191016/
- 日本性科学会「カウンセリング室」 https://sexology.jp/counseling/
- 日本性科学会「セックスカウンセラー・セラピスト一覧」 https://sexology.jp/counselors_list/
この記事について
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- フェムコア研究所 編集部
- 確かめ方
- 参考文献に挙げた12件の資料を開いて、数字や表現が原文と合っているかを確認しています。「必ず治る」「誰にでも効く」とは書きません。
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- 2026.11.01 公開
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