膣の乾燥(デリケートゾーンの乾燥)の原因と対処、更年期のGSMと受診の目安
腟の乾燥は閉経後のGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)のほか、授乳中やピル、がん治療でも起こります。保湿剤と潤滑剤の違い、洗い方の注意、婦人科での治療と受診の目安を説明します。
学会・公的機関の資料と論文をもとに書いています。編集方針

この記事でわかること
- 閉経後に多いGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)と、産後・ピル・がん治療など閉経以外の原因
- 腟用保湿剤と潤滑剤の違い、洗いすぎないなど自分でできるケア
- 婦人科で受けられる腟用エストロゲン製剤やホルモン補充療法と、レーザー治療の研究の状況
目次
腟の乾燥は、多くの女性が人生のどこかで経験するよくある症状です [1]。いちばん多い原因は閉経にともなう女性ホルモン(エストロゲン)の低下で、これによる腟・外陰部・尿路の変化は「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」と呼ばれ、閉経後の女性の27〜84%にみられると報告されています [3]。閉経前でも、授乳中、ピルや一部の抗うつ薬の服用、がんの治療、ストレスなどで起こることがあります [1][2]。症状が軽いうちは腟用の保湿剤や潤滑剤が最初の選択肢とされ、続く場合は婦人科で腟用のエストロゲン製剤などを相談できます [3][4]。
腟の乾燥はどのくらい多い?
腟の中はふだん、分泌液で適度にうるおっています。このうるおいが減ると、ヒリヒリする、かゆい、性交のときに痛いといった症状が出てきます。
乾燥は年齢を問わず起こります。米国クリーブランド・クリニックの解説では、閉経前の女性の15%以上、閉経後では半数以上が腟の乾燥を経験するとされています [2]。北米閉経学会(NAMS、現在のThe Menopause Society)の2020年の声明では、GSMは閉経後の女性の約27〜84%にみられ、診断も治療も十分にされていないと指摘されています [3]。
日本でも、40歳以上の女性1,031人を対象にしたインターネット調査で、約20%(208人)がGSMの症状を強く自覚していたと報告されています。同じ調査では、症状があっても受診したくないと答えた人が少なくなかったことも示されています [7]。人に言いにくい症状ですが、婦人科ではよくある相談の一つです。
GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)とは
GSMは、英語の Genitourinary Syndrome of Menopause の略です。日本女性医学学会は、GSMを「閉経後のエストロゲン低下に伴う、外陰部・腟の萎縮変化およびそれに伴う身体症状」と説明しています [5]。以前は「外陰腟萎縮」「萎縮性腟炎」などの名前が使われていましたが、見た目の変化だけでなく、腟・外陰部・尿路の症状をまとめて表す言葉として、専門家の合意によってGSMという名前がつくられました [3]。
エストロゲンが減ると、腟の粘膜は薄く、乾きやすく、傷つきやすくなります。腟のうるおいが減るため性交痛が起こりやすくなり、日本女性医学学会の冊子では「性交痛がある場合には腟粘膜が乾燥している可能性が極めて高い」とされています [5]。萎縮した組織は感染や炎症も起こしやすくなります [5]。
NAMSの声明では、GSMは有効な治療をしないと進みやすく、治療をやめると症状が戻りやすいとされています [3]。

閉経以外の原因
腟の乾燥は、更年期だけのものではありません。主な原因は次のとおりです [1][2][6]。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 産後・授乳中 | 授乳中はエストロゲンが低い状態が続くため、乾燥しやすくなります |
| ピルなどのホルモン剤 | 低用量ピルなどのホルモンによる避妊法で乾燥を感じる人がいます |
| 一部の抗うつ薬 | 薬の種類によって乾燥が起こることがあります |
| がんの治療 | 化学療法(抗がん剤)、放射線治療、ホルモン療法、卵巣を取る手術などで起こることがあります |
| 子宮内膜症・子宮筋腫の治療薬 | エストロゲンの働きを抑える薬で乾燥することがあります |
| ストレス、喫煙、飲酒 | 乾燥に関わる要因として挙げられています |
| 性的な興奮が十分でない | 性交の際、うるおいが出る前に挿入すると乾燥や痛みにつながります |
| 香料入りの石けん・洗浄剤、腟洗浄 | 刺激で乾燥や炎症が起こりやすくなります |
| 病気 | 糖尿病、シェーグレン症候群(目や口が乾く病気)、膠原病、外陰部の皮膚の病気(扁平苔癬など) |
ピルや抗うつ薬を飲んでいて乾燥が気になる場合も、自己判断でやめずに、処方した医師に相談してください。
こんな症状はありませんか
乾燥にともなって、次のような症状が出ることがあります [1][2][3]。
- 腟や外陰部がヒリヒリする、ひりつく、かゆい
- 下着がすれると痛い、座ると違和感がある
- 性交のときに痛い、性交後に少し出血する
- おりものの量や色がいつもと違う
- トイレが近い(頻尿)、排尿時にしみる
- 膀胱炎をくり返す
かゆみやおりものの変化はカンジダなどの感染症でも起こるため、乾燥だと決めつけないことも大切です。性交痛については「性交痛の原因と対処」、腟のゆるみや閉経後の変化については「膣のゆるみ」の記事もあわせてご覧ください。
自分でできること
ここで紹介するのは、ガイドラインや医療機関の解説で勧められている方法です。合う・合わないには個人差があります。
腟用保湿剤と潤滑剤の違い
NAMSの声明では、症状が軽い場合、処方せんなしで使える保湿剤や潤滑剤で多くの人が十分に楽になるとされ、最初に試す方法に位置づけられています [3]。似たものに見えますが、使い方が違います。
| 腟用保湿剤(モイスチャライザー) | 潤滑剤(ルブリカント) | |
|---|---|---|
| 目的 | 腟の中のうるおいをふだんから保つ | 性交のときの摩擦を減らす |
| 使うタイミング | 性交と関係なく、数日おきに定期的に | 性交の直前に |
| 主なタイプ | 腟の中に入れるジェルなど | 水性、シリコーン性など |
英国NHSも、保湿剤と潤滑剤は別のものと説明しています [1]。クリーブランド・クリニックは、保湿剤は数日おきに腟の中に使い、潤滑剤は性交の直前に使うもので、主に水性のものが勧められるとしています [2]。
顔や体用のローション、腟用でないクリームは刺激や感染の原因になることがあるため、腟の中には使わないよう勧められています [1][6]。
洗いすぎない
- 外陰部は、香料の入っていないやさしい石けんで、外側だけを洗う
- 腟の中まで洗う、腟洗浄(ビデなど)を習慣にする、香料入りのシートやスプレーを使うのは避ける
- 綿など通気性のよい下着を選ぶ
腟の中には自浄作用があるため、洗いすぎや香料はかえって刺激になるとされています [1][2]。
性交のときの工夫
前戯の時間を長めにとり、うるおいが出てから挿入する、潤滑剤を使う、痛いときは無理をしないことが勧められています [1][2]。

何科に行けばいい?受診の目安
相談先は婦人科です。更年期の不調全般を診る「女性外来」「更年期外来」もあります。頻尿や膀胱炎をくり返すことが主な悩みなら、泌尿器科でも相談できます。がんの治療中・治療後の方は、まず担当の医師に相談してください [3]。
こんなときは受診を
- 保湿剤などを数週間試しても変わらない [1]
- 乾燥や痛みで日常生活や性生活に支障がある [1]
- 性交痛が続いている [5]
- 頻尿や膀胱炎をくり返す
早めに受診したほうがよいサイン
- 閉経後の出血、性交後の出血、月経以外の出血 [1]
- いつもと違うおりもの(色・におい・量)、強いかゆみ [1]
- 排尿時の強い痛みや発熱をともなう
閉経後の出血は、乾燥のほかに子宮や腟の病気が隠れていることもあるため、早めに確認してもらいましょう。
婦人科ではどんな治療をするの?
婦人科では問診と内診で腟や外陰部の状態を確かめ、必要に応じておりものの検査などで感染症がないかを調べます。そのうえで、症状や希望、持病に合わせて治療を相談します。
腟用エストロゲン製剤
腟の中に直接エストロゲンを補う薬です。日本では、エストリオールの腟錠(例:エストリール腟錠)が「腟炎(老人、小児及び非特異性)」などの効能で承認されており、通常1日1回腟内に入れて使います [8]。日本女性医学学会は、腟などの局所の症状には局所へのホルモン治療が有効で、全身的な副作用はないとしています [5]。
コクラン・レビュー(30件の試験、閉経後の女性6,235人)では、腟用エストロゲンはプラセボ(偽薬)に比べて症状が軽くなった人が多かったと報告されています。ただし根拠の質は低いとされ、クリーム・腟錠・リングといった剤形による違いははっきりしませんでした [9]。
なお、乳がん・子宮体がんなどエストロゲンで進むがんがある人、その疑いがある人、妊娠中の人には使えません [8]。
ホルモン補充療法(HRT)
のみ薬や貼り薬、塗り薬で全身にエストロゲンを補う治療です。ほてりや発汗など、ほかの更年期症状もある場合に検討されます。日本女性医学学会は、子宮がある人は子宮体がんを防ぐために黄体ホルモン製剤を併用するとしています [5]。乳がんの人やその既往がある人、静脈血栓塞栓症の既往がある人などは受けられません [5]。腟の症状だけが目的の場合は、全身のHRTより腟用の製剤が勧められることが多いとされています [4]。
そのほかの選択肢
海外では、腟用のDHEA製剤や、のみ薬のオスペミフェンも有効とされています [3]。ただし国内で使えるかどうかは医療機関に確認が必要です。
レーザー・高周波治療
自由診療で、炭酸ガスレーザーなどを腟の粘膜に当てる治療も行われています。NAMSは、プラセボと比べた試験が不十分で、効果や安全性を判断できないとして、推奨をしていません [3]。米国食品医薬品局(FDA)は2018年、閉経にともなう腟の症状などをうたうエネルギー機器について、安全性と有効性が確立されていないと注意を呼びかけ、腟のやけどや瘢痕、くり返す痛みなどの報告があったとしています [10]。受ける場合は、研究の状況やリスク、費用の総額を事前に確認しましょう。
よくある質問
Q1. 20代・30代でも腟は乾燥しますか?
乾燥します。閉経前の女性でも15%以上が経験するとされ、授乳中、ピルや一部の抗うつ薬の服用、ストレス、香料入りの洗浄剤の使用などが関係することがあります [2]。続く場合は婦人科で相談してください。
Q2. 保湿剤と潤滑剤はどちらを使えばいいですか?
目的が違います。ふだんから乾燥やヒリヒリ感がある場合は、数日おきに使う腟用保湿剤、性交のときの痛みが主な悩みなら、その直前に使う潤滑剤が向いています [1][2]。両方を使う人もいます。
Q3. デリケートゾーン用のソープで毎日しっかり洗ったほうがいいですか?
外陰部を外側からやさしく洗う程度で十分とされています。腟の中を洗ったり、香料入りの洗浄剤やスプレーを使ったりすると、刺激でかえって乾燥や炎症が起こりやすくなります [1][2]。
Q4. 腟の乾燥は放っておくと治まりますか?
授乳中など一時的な原因なら、時間とともに落ち着くこともあります。一方、閉経にともなうGSMは、治療をしないと症状が進みやすいとされています [3]。数週間セルフケアを続けても変わらないときは受診を検討してください [1]。
Q5. 乳がんの治療中・治療後でも、腟の乾燥の治療はできますか?
保湿剤や潤滑剤は選択肢になります。腟用エストロゲンなどのホルモン剤は、乳がんの方での安全性を確かめるデータが十分でないとされ、本人の希望と担当の腫瘍内科医などの意見をふまえて決めることが勧められています [3]。まず治療を受けている医師に相談してください。
参考文献
参考にした論文・資料(10件)
- NHS. Vaginal dryness. https://www.nhs.uk/conditions/vaginal-dryness/
- Cleveland Clinic. Vaginal Dryness: Causes, Symptoms, Treatment. https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/21027-vaginal-dryness
- The 2020 genitourinary syndrome of menopause position statement of The North American Menopause Society. Menopause. 2020;27(9):976-992. doi:10.1097/GME.0000000000001609. https://www.isswsh.org/images/content/2020-NAMS-GSM-Paper.pdf
- MSDマニュアル プロフェッショナル版. 炎症性腟炎(閉経関連泌尿生殖器症候群と局所エストロゲン療法の記載を含む). https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/腟炎-子宮頸管炎-および骨盤内炎症性疾患/炎症性腟炎
- 日本女性医学学会. ホルモン補充療法の正しい理解をすすめるために(2023年10月). https://www.jmwh.jp/pdf/hrt_guide_book.pdf
- HSE(アイルランド保健サービス). Vaginal dryness. https://www2.hse.ie/conditions/vaginal-dryness/
- Ohta H, Hatta M, Ota K, Yoshikata R, Salvatore S. An online survey on coping methods for genitourinary syndrome of menopause, including vulvovaginal atrophy, among Japanese women and their satisfaction levels. BMC Womens Health. 2023. https://doaj.org/article/c6af0ff63fc745b6aefb8e44a7cd94bd
- PMDA. エストリール腟錠0.5mg(エストリオール)添付文書. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/790005_2529701H1058_1_10
- Lethaby A, Ayeleke RO, Roberts H. Local oestrogen for vaginal atrophy in postmenopausal women. Cochrane Database Syst Rev. 2016;(8):CD001500. https://cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD001500.pub3/information
- MedTech Dive. FDA warns about vaginal rejuvenation device claims(2018年7月). https://www.medtechdive.com/news/fda-warns-about-vaginal-rejuvenation-device-claims/528967/
※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。
この記事について
- 書いた人
- フェムコア研究所 編集部
- 確かめ方
- 参考文献に挙げた10件の資料を開いて、数字や表現が原文と合っているかを確認しています。「必ず治る」「誰にでも効く」とは書きません。
- 更新履歴
- 2026.10.31 公開
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