子宮脱・膀胱瘤(骨盤臓器脱)とは?子宮が下がる原因と症状、自分でできること
腟の入り口に何かが触れる、股に何か挟まっている感じがする。子宮脱や膀胱瘤などの骨盤臓器脱について、原因と症状、骨盤底筋トレーニング、ペッサリーや手術といった治療の選択肢と、何科に行けばいいかを説明します。
学会・公的機関の資料と論文をもとに書いています。編集方針

この記事でわかること
- 子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤など、骨盤臓器脱の種類と進み方の目安
- 骨盤底筋トレーニングや生活習慣など、軽い段階で自分でできること
- ペッサリーや手術など医療機関での選択肢と、受診する科
子宮脱は、子宮を支える筋肉や靱帯がゆるみ、子宮が腟の中へ下がってくる状態です。膀胱が下がる「膀胱瘤」、直腸が下がる「直腸瘤」などと合わせて「骨盤臓器脱」と呼ばれ、出産や加齢、閉経、便秘などが関係します。股に何か挟まっている感じや、尿・便の出にくさにつながることがあります。軽い段階では骨盤底筋トレーニングが最初の選択肢とされ、症状に応じてペッサリーや手術も選べます。気になる場合は婦人科や泌尿器科、ウロギネコロジー外来で相談できます。
骨盤臓器脱はどのくらい多い?
骨盤の底には、膀胱・子宮・直腸をハンモックのように下から支える骨盤底筋や靱帯があります。これらがゆるんだり傷ついたりすると、臓器が腟の中へ下がり、ひどくなると腟の外まで出てくることがあります。これが骨盤臓器脱です[1][2]。
骨盤臓器脱は、決して珍しいものではありません。
- スウェーデンの女性約8,000人を対象にした研究では、症状のある骨盤臓器脱を自覚していた人は8.3%と報告されています[3]。
- 欧米では、出産を経験した女性の30〜40%に何らかの骨盤臓器脱が見られるという報告があります[4]。
- 日本の泌尿器科医の解説では、婦人科の健診や受診時の内診で、約40〜50%に臓器脱が見つかったという報告も紹介されています[5]。
内診で見つかるような軽いものの多くは、本人が気づかないか、困るほどではありません。英国のNHSも、症状がない、または気にならない程度なら治療をしないことも選択肢の一つとしています[2]。
骨盤臓器脱の種類
どの臓器が下がっているかで呼び名が変わります。いくつかが同時に起こることも多いです[1][6]。
| 呼び名 | 下がってくるもの | 起こりやすい症状の例 |
|---|---|---|
| 膀胱瘤(ぼうこうりゅう) | 膀胱が腟の前側の壁ごと下がる | 尿が出にくい、出し切れない感じ、頻尿、尿漏れ |
| 子宮脱 | 子宮が腟の中へ下がる、または腟の外へ出る | 股に何か挟まっている感じ、腟の入り口に何か触れる |
| 直腸瘤(ちょくちょうりゅう) | 直腸が腟の後ろ側の壁ごと下がる | 便が出し切れない、排便時に腟のあたりを押さえないと出にくい |
| 小腸瘤 | 小腸が腟の奥のほうへ下がる | 下腹部や腟の重い感じ |
| 腟断端脱 | 子宮を摘出したあと、腟の奥(断端)が下がる | 子宮脱と似た症状 |
日本の解説では、骨盤臓器脱の中で最も多いのは膀胱瘤とされています[6]。
進み方の目安(ステージ)
医療機関では、内診で「どこまで下がっているか」を測り、POP-Qという分類で0〜4のステージに分けることが多いです[5][7]。
| ステージ | 目安 |
|---|---|
| 0 | 脱出なし |
| 1 | 最も下がった部分が、腟の入り口(処女膜)より1cm以上奥にある |
| 2 | 最も下がった部分が、腟の入り口の前後1cm以内にある |
| 3 | 腟の入り口から1cm以上外に出ているが、すべては出ていない |
| 4 | 腟が完全に裏返るように外へ出ている |
ステージの数字と、本人の困りごとの大きさは必ずしも一致しません。治療は、ステージよりも症状の強さをもとに考えるとされています[7]。

子宮が下がる原因
英国のNHSやMSDマニュアルでは、主に次のような要因が挙げられています[2][7]。
- 妊娠・出産: 経腟分娩、出産時間が長かった、鉗子・吸引分娩、大きな赤ちゃんの出産など。
- 加齢・閉経: 年齢とともに筋肉や組織が弱くなります。閉経後に増えやすいとされています。
- お腹に圧がかかり続けること: 肥満、長く続く便秘といきみ、慢性的な咳(喫煙やぜんそくなど)、重い物を持つ仕事。
- 骨盤の手術: 子宮摘出術など。
- 体質: 関節が柔らかすぎる体質や、結合組織の病気(マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群など)。
出産経験がなくても起こることがあります。
こんな症状はありませんか
骨盤臓器脱があっても、症状がまったくない人もいます。子宮頸がん検診などで、たまたま指摘されて気づくこともあります[2]。症状がある場合は、次のようなものが多いです[2][4]。
- 腟や下腹部が重い、引っぱられる、圧迫される感じ
- 股に何か挟まっている感じ、ピンポン玉のようなものが触れる・見える
- 夕方や長く立っていたあとに強くなり、横になると楽になる
- 尿が出にくい、出し切れない感じ、トイレが近い、咳やくしゃみで漏れる
- 便秘、便が出し切れない感じ
- 下着とこすれて出血する
- 性交時の痛みや違和感
尿漏れについては女性の尿漏れの記事でも詳しく説明しています。
自分でできること
ここで紹介するのは、研究やガイドラインで報告されている方法です。効果には個人差があり、すでに下がっている臓器を元の位置に戻すものではありません。一つの選択肢として参考にしてください。
骨盤底筋トレーニング
骨盤底筋トレーニングは、軽い骨盤臓器脱に対して最初に試す方法とされています。
研究で報告されていること
- コクラン・レビュー(Hagenら, 2021)は、骨盤臓器脱の女性を対象にした試験をまとめています。骨盤底筋トレーニングと「何もしない」を比べた4件の試験(857人)では、症状を調べた3件すべてでトレーニング群のほうが良い結果でした[8]。
- 2件の試験をまとめた解析では、トレーニングをした人はステージが改善する割合が17%高かったと報告されています[8]。
- 一方で、試験の数が少なく規模も小さいこと、長期の効果がわかっていないことが限界として挙げられています[8]。
英国NICEのガイドラインでは、ステージ1〜2の骨盤臓器脱に対して、専門職の指導のもとで少なくとも16週間の骨盤底筋トレーニングを最初の選択肢として勧めています。効果があれば、その後も続けることが勧められています[9]。
やり方の基本は、尿やおならを我慢するように、腟と肛門のまわりを締めて体の中へ引き上げ、数秒キープしてからゆっくりゆるめる、の繰り返しです。お腹やお尻に力が入りやすく、自分では正しくできているか分かりにくいのが難点です。具体的な手順は腟トレ(骨盤底筋トレーニング)の記事で紹介しています。日本でも、看護師や理学療法士が個別に指導してくれる病院があります[4]。
生活の中で見直せること
NICEとNHSでは、次のような生活上の工夫が勧められています[2][9]。
- 体重: BMIが30を超える場合は減量を検討する。
- 便秘を防ぐ: 食物繊維と水分をとり、強くいきまずに排便できるようにする。
- 重い物を持つことを減らす: 仕事や介護、育児で避けられない場合は、持ち方や回数を工夫する。
- 禁煙: 慢性的な咳は骨盤底に負担をかけます。
- 運動: ウォーキングなど軽い運動はよいとされますが、ジャンプやランニングなど骨盤底に強い衝撃がかかる運動は控えめにするよう勧められています。

受診の目安と、何科に行けばいいか
何科?
- 婦人科:子宮が下がる感じ、腟の違和感があるときにまず相談しやすい科です。
- 泌尿器科:尿が出にくい、頻尿、尿漏れなど尿の症状が中心のとき。女性泌尿器科を掲げるクリニックもあります。
- ウロギネコロジー外来(女性泌尿器科・女性骨盤底外来):婦人科と泌尿器科の両方の視点で、骨盤臓器脱や尿漏れを専門に診る外来です。大学病院や総合病院に設けられていることが多いです。
日本の泌尿器科医の解説でも、症状に気づいたら婦人科か泌尿器科を受診するとされています[5]。どちらに行っても、必要なら専門の外来を紹介してもらえます。
こんなときは相談を
- 腟の入り口に何かが触れる、見える
- 股に何か挟まっている感じや、重い感じが続いている
- 尿や便が出にくい、出し切れない感じがある
- 骨盤底筋トレーニングを数か月続けても変わらない、または悪くなっている
- 症状のせいで外出や運動、仕事を控えている
早めに受診したほうがよいサイン
- 外に出たものが戻らない、またはこすれて出血や痛みがある
- 尿がほとんど出ない
- 発熱や排尿時の痛みがある(膀胱炎などの可能性)
- 閉経後に出血がある
医療機関で行うこと
診察
問診のあと、内診で下がっている臓器と程度を確認します。お腹に力を入れていきんでもらい、どこまで下がるかを見ることもあります。尿の症状がある場合は、膀胱の状態を調べる検査が追加されることもあります[2][6]。
ペッサリー
ペッサリーは、腟の中に入れて臓器を下から支える、リング状などの器具です。手術を望まない人、まだ妊娠を考えている人、体の状態から手術が難しい人などが選ぶことが多いとされています[4]。
- 日本の解説では、ステージ2以上で症状がある場合に試みるとされています[5]。
- 自分で出し入れする方法と、医療機関で定期的に交換する方法があります[4][5]。
- おりものの増加、出血、腟の炎症などが起こることがあるため、定期的な受診が必要です[6][9]。NICEは、合併症を防ぐために少なくとも6か月ごとに取り外すことを勧めています[9]。
- 合うサイズや形が見つかるまで、何度か試すことがあります[9]。
閉経後で腟の乾燥や萎縮がある場合は、腟に使う女性ホルモン剤を併用することもあります[2][9]。
手術
保存的な方法で症状が十分に変わらない場合や、本人が手術を希望する場合に検討します[9]。主な方法は次のとおりです。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 自分の組織を使う腟からの手術 | 腟の壁を縫い縮めて補強する。メッシュを使わない従来の方法で、再発が比較的多いとされる[4] |
| TVM手術(経腟メッシュ手術) | 腟から人工のメッシュを入れて臓器を支える。子宮を残せる。メッシュが腟に露出するなどの合併症が問題となり、米国FDAは2019年に経腟メッシュ製品の販売を中止させた。日本では行われているが、全例の登録が求められている[5] |
| 腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC) | お腹に小さな穴を開け、腹腔鏡でメッシュを使って腟や子宮頸部を仙骨(骨盤の後ろの骨)に固定する。日本では保険が使え、現在の標準的な術式の一つとされている[5]。ロボット支援手術は2020年4月から保険の対象になった[10] |
| 腟閉鎖術 | 腟を閉じる手術。体への負担が比較的少ないが、性交はできなくなる。高齢で体の負担を減らしたい人が対象になる[4][9] |
どの方法にも、再発の可能性や合併症があります。NICEは、再発のリスクやメッシュの長期的な影響について医師と十分に話し合ってから決めるよう勧めています[9]。年齢、症状、子宮を残したいか、性生活の希望などによって合う方法が変わるため、説明を聞いて納得してから選ぶことが大切です。
よくある質問
Q1. 子宮脱は放っておくと悪くなりますか?
進む人もいれば、長い間変わらない人もいます。症状がない、または気にならない程度なら、治療をせずに様子を見ることも選択肢の一つです。ただし、出てくるものが大きくなった、尿や便が出にくくなったなど変化があれば、受診してください。
Q2. 骨盤底筋トレーニングで子宮は元に戻りますか?
研究では、トレーニングで症状が軽くなったり、ステージが改善したりする人がいると報告されています。一方で、すべての人に当てはまるわけではなく、すでに大きく下がっている場合は、トレーニングだけでは十分でないこともあります。軽い段階のうちに始め、専門職の指導を受けると正しいやり方を確認できます。
Q3. 出産したことがなくても子宮脱になりますか?
なることがあります。出産は大きな要因の一つですが、加齢や閉経、肥満、便秘、慢性的な咳、体質なども関係します。
Q4. ペッサリーを入れたまま生活できますか?
多くの場合、入れたまま普段どおりに生活できます。自分で出し入れするタイプなら、性生活と両立しやすいとされています。おりものや出血、痛みが出た場合は、早めに受診してください。
Q5. 手術をすると性生活はできなくなりますか?
腟閉鎖術以外の多くの手術では、性生活を続けることができます。ただし、手術の方法によっては性交時の痛みが起こることがあると報告されています。性生活の希望は、手術の方法を選ぶうえで大切な情報なので、遠慮せずに医師に伝えてください。
参考文献
参考にした論文・資料(10件)
- MSDマニュアル家庭版. 骨盤臓器脱(POP). https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/22-女性の健康上の問題/骨盤臓器脱-pop
- NHS. Pelvic organ prolapse. https://www.nhs.uk/conditions/pelvic-organ-prolapse/
- MSDマニュアル プロフェッショナル版. 骨盤臓器脱(POP). https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/骨盤臓器脱-pop
- 杏林大学医学部付属病院 女性骨盤底外来. 骨盤臓器脱(患者向け資料). https://www.kyorin-u.ac.jp/hospital/clinic/surgery09/pdf/zoukidatsu.pdf
- 佐々木ひと美ほか(藤田医科大学 腎泌尿器外科). 骨盤臓器脱. 現代医学 71巻1号, 2024. https://www.aichi.med.or.jp/webcms/wp-content/uploads/2024/06/71_1_p034_Special1-Sasaki.pdf
- メディカルノート. 骨盤臓器脱. https://medicalnote.jp/diseases/骨盤臓器脱
- MSDマニュアル プロフェッショナル版. 骨盤臓器脱(POP)の概要. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/骨盤臓器脱-pop/骨盤臓器脱-pop-の概要
- Hagen S, Stark D. Conservative prevention and management of pelvic organ prolapse in women. Cochrane Database Syst Rev. 2021;CD003882. https://www.cochrane.org/evidence/CD003882_conservative-management-pelvic-organ-prolapse-women
- NICE guideline NG123. Urinary incontinence and pelvic organ prolapse in women: management. https://www.nice.org.uk/guidance/ng123/chapter/Recommendations
- 岡山大学病院. 新たにロボット支援手術2種類(ロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術、ロボット支援腹腔鏡下仙骨膣固定術)の保険診療を導入(プレスリリース, 2020年7月30日). https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r2/press20200730-7.pdf
※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。
この記事について
- 書いた人
- フェムコア研究所 編集部
- 確かめ方
- 参考文献に挙げた10件の資料を開いて、数字や表現が原文と合っているかを確認しています。「必ず治る」「誰にでも効く」とは書きません。
- 更新履歴
- 2026.10.31 公開
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